「当たるも八卦当たらぬも八卦」に学ぶ!不確実な時代の意思決定術とは?

1. はじめに

「当たるも八卦当たらぬも八卦」という言葉を、あなたはどこで聞いたことがあるでしょうか?

街角の占い師の前で、あるいはバラエティ番組の運勢コーナーで、あるいは会社の同僚が軽く口にした会話の中で——。
このことわざは、日本において非常に広く知られている一方で、「ただの占いの話」「運任せの言い訳」として軽く受け流されがちです。

しかし、この言葉の本質はもっと深く、現代のビジネスパーソンにとっても、重要な示唆を含んでいると私は考えます。

なぜなら、現代社会もまた、予測不能な出来事に満ちているからです。

  • 市場が急変する

  • 顧客のニーズが変わる

  • 人材が予想以上に活躍する(あるいはしない)

  • 世界情勢により、戦略が白紙に戻る

こうした現実のなかで、私たちは「確実性のない判断」を日々迫られています。
そのたびに、「うまくいくかどうかは、やってみなければわからない」という現実と向き合う必要があります。

まさに、それが「当たるも八卦当たらぬも八卦」なのです。

このブログでは、まずこのことわざの成り立ちと背景を丁寧に掘り下げた上で、それがどのように現代の仕事や意思決定に応用できるのかを、実際のビジネス例を交えながらご紹介していきます。

読み終えたとき、きっとあなたもこのことわざを「ただの占いの言葉」とは思わなくなるはずです。


2. ことわざ「当たるも八卦当たらぬも八卦」の背景

「当たるも八卦当たらぬも八卦」という言葉は、日本語の中でも非常に独特な位置づけを持つことわざです。
なぜなら、それは単なる言語表現にとどまらず、人間の「未来に対する姿勢」を象徴しているからです。

2-1. 当たるも八卦当たらぬも八卦 八卦とは

「八卦」とは、古代中国の思想『易経(えききょう)』に基づいた占術の基本単位のことです。
この「八卦」は以下の8つの要素で構成されています。

八卦名 象徴する自然現象 特徴的な意味
乾(けん) 創造、陽、父性
坤(こん) 受容、陰、母性
震(しん) 始動、驚き
巽(そん) 浸透、柔軟
坎(かん) 陥没、困難
離(り) 明るさ、知性
艮(ごん) 止まる、静寂
兌(だ) 喜び、交流

これらの八卦を組み合わせて「六十四卦」ができ、それぞれの組み合わせに応じて吉凶や運勢を占うというのが、古来の「易占(えきせん)」の仕組みです。

現代では「占い」と言えばタロットや血液型、星座占いが一般的ですが、もともとはこの「八卦」による占いが東アジア文化圏では主流だったのです。

2-2. 当たるも八卦当たらぬも八卦 由来

このことわざの出自は、江戸時代の庶民文化にあります。
当時、街角には「八卦見(はっけみ)」と呼ばれる占い師がいて、人々は人生の節目ごとに彼らのもとを訪れました。

恋愛、結婚、就職、引っ越し、病気——あらゆる場面で「占い」は相談の対象でした。
しかし、当然ながらその結果は「当たることもあれば、外れることもある」。

そこで、「八卦占いなんて所詮はそういうものだ」と達観した表現として、
「当たるも八卦、当たらぬも八卦」が使われるようになったのです。

このことわざには、ある種の諦念と同時に、「結果にこだわりすぎず、人生の流れを受け入れる姿勢」が込められています。

現代のビジネスにおいても、同じような局面はたくさんあります。データや予測を使って戦略を練っても、うまくいかないことはあります。
逆に、「こんな施策で効果あるのか?」と疑われたアイディアが大成功を収めることもある。

そういう「運・タイミング・予想外」を含めて受け止めるための考え方として、今なおこのことわざは輝きを放っているのです。


3. ことわざの意味とビジネスでの応用

3-1. 当たるも八卦当たらぬも八卦 意味

「当たるも八卦当たらぬも八卦」とは、占いの結果は当たることもあれば、外れることもある、ということを表しています。しかしこの言葉は単に「占いってあてにならないね」という皮肉で終わるものではありません。

このことわざに込められた深い意味とは、「未来は誰にも読めないものであり、どれだけ準備をしても不確実性は避けられない」という人間の根源的な真理を表しています。

そして、だからこそ「運」や「偶然」を含んだ出来事にも柔軟に対応しよう、という寛容なマインドが育まれるのです。

ビジネスの場においても、まさにこの思考が求められています。

たとえば、どれだけデータ分析を尽くして市場調査を重ねても、「成功するかどうかは最終的にはお客様次第」という不可知な要素が常につきまといます。

商品がヒットするかどうか。採用した社員が活躍するかどうか。プロジェクトが成功するかどうか。
すべて「人間の判断」や「社会の流れ」に影響されるもので、未来を完全にコントロールすることはできません。

だからこそ、このことわざはビジネスにも活かせる「行動指針」になり得るのです。

「完璧な判断なんてない。だからこそ、不確実性を前提に、まずはやってみる」
この考え方ができるかどうかで、ビジネスのスピードも、柔軟性も、大きく変わってきます。

3-2. 当たらずも八卦との違い

「当たるも八卦当たらぬも八卦」は、ことわざとしてフルの形で使われることが多いですが、会話などでは短く「当たらずも八卦」と表現されることがあります。

この「当たらずも八卦」は、外れたときの言い訳として使われがちです。たとえば、占いが的外れだった時に「まあ、当たらずも八卦って言うしね」というように。

しかし、元々の意味を考えれば「当たらないことも想定済みで、それでも物事に取り組む」という、非常に前向きなスタンスが含まれていることが分かります。

たとえば、「営業メールを送ったけど反応がなかった」とき、「当たらずも八卦」と言ってしまえばそれまでですが、実は「その一通のメールから新たな学びを得た」「反応しなかった理由を分析して、次回に活かせた」のであれば、それは単なる外れではありません。

つまり、「当たらないこと」そのものを前提にしておくことが、挑戦の継続性を支える土台になるということです。

3-3. 当たるもの八卦・外れるも八卦の使い分け

このことわざのバリエーションに、「当たるもの八卦」「外れるも八卦」という表現もあります。これらは、もともとのフレーズをさらに分解し、「どちらの結果でもそれで良し」とする意味合いをより強調したものです。

ビジネスに置き換えれば、こうした言い回しは「結果を受け入れられるマインドセット」を象徴しています。

たとえば、A/Bテストを行った結果、想定していた施策Aが負けたとしても、「それも八卦=実験のうち」として冷静に受け止められるチームは強い。
逆に、「外れたことに過剰に反応して責任追及モード」になってしまうと、組織の活力を奪ってしまいます。

成功にも失敗にも過度に振り回されず、「それもまた結果の一つ」と受け止める視点が、この言葉の真の力なのです。


4. 八卦占いと現代の意思決定

4-1. 八卦 意味と基本構造

「八卦(はっけ)」は、中国古代の宇宙観・自然観に基づいて構築された象徴体系です。
その思想の背景には「万物は陰と陽のバランスによって成り立っている」という考えがあります。

八卦はすべて「三本の直線」で構成され、それぞれの線は「陽(実線)」と「陰(破線)」で表されます。
この三本一組の組み合わせによって、8種類の「卦」ができるのです。

意味 自然現象 特性
乾(☰) 創造・父 強くて動的
坤(☷) 受容・母 優しく受け止める
震(☳) 振動・始動 始まり、勢い
巽(☴) 柔軟・拡散 入り込む・影響力
坎(☵) 陥る・試練 危険・知恵
離(☲) 明るさ・分離 照らす・知性
艮(☶) 静止・制止 止まる・終わり
兌(☱) 喜び・調和 社交・楽しみ

これら八卦は、二つを組み合わせることで「六十四卦」が作られます。そしてその組み合わせによって、人間のあらゆる状況を読み解く占いが「易占(えきせん)」です。

現代ではITやAIの時代といわれますが、データと統計もまた「予測するための体系」と捉えると、八卦と本質的には近いとも言えるのです。

4-2. 八卦見の実態とその魅力

江戸時代、日本の町中には「八卦見(はっけみ)」と呼ばれる占い師が点在していました。彼らは道ばたや寺社の近くで机を広げ、手相や生年月日、風水などを使って占いを行っていたのです。

彼らの占いは、時に人々の心の支えとなり、決断の背中を押す役割を果たしました。
現代でも、経営者や著名人が「最後は占い師に相談した」と語ることも少なくありません。

もちろん、ビジネスでの最終決定を占いに頼るのはリスクがあります。しかし、「論理では答えが出ないときに、直感や第三者の視点を得る」という意味では、八卦見の役割はいまもなお生きているのです。

また最近では、「データサイエンス」や「AIの予測モデル」も、形を変えた“現代の八卦”と考えることができます。
その精度が上がったとはいえ、あくまで予測にすぎず、「当たるも外れるも予測」という事実は変わりません。

つまり「八卦的な思考法」は、現代の意思決定にも通じる、古くて新しい知恵なのです。


5. ビジネスシーンでの実例解説

この章では、「当たるも八卦当たらぬも八卦」の考え方がビジネスのどのような場面で顔を出すのか、具体的な3つの仕事の現場をもとに考察していきます。偶然の結果をただ運に任せるのではなく、「偶然を前提とした戦略的思考」として、このことわざの知恵をどう活かすかが鍵です。


5-1. 【例1】新規事業の成否は占いレベル?

ある食品メーカーでは、コロナ禍以降の食生活の変化に対応しようと、「冷凍完全食」の新規ブランドを立ち上げるプロジェクトが発足しました。
マーケティング部門は、ヘルスケア需要の増加、在宅勤務者の増加、冷凍庫の普及率上昇など、多角的なデータを集めて分析し、「市場はある」と判断しました。

しかし、役員会議では反対意見も多数。「健康食品の市場は飽和している」「ブランド構築には時間がかかりすぎる」などの理由で、プロジェクトは一度ペンディングになります。

最終的に、ある役員がこう言いました。

「正直、どっちに転ぶかわからん。…でも、当たるも八卦当たらぬも八卦だ。やってみないと始まらないだろ」

こうしてスタートしたプロジェクトは、初年度は赤字こそ出したものの、2年目からはInstagramとの連携による自然発生的なブームが起き、業界内でも話題の商品に成長。
結果的には「やってみなければわからない」という判断が大きな成功につながったのです。

この例に見られるように、「確率50%以下の挑戦」であっても、未来の要素は読めないもの。
だからこそ、理詰めだけでなく、運やタイミングも織り込んだ「行動する勇気」が重要です。


5-2. 【例2】採用判断で感じた「直感と八卦」

中堅IT企業の人事部では、最終面接で最も悩まされるのが「スペックでは測れない人物像」の見極めです。

ある年の新卒採用で、学歴や資格、インターン歴などの数値上は平凡な応募者Aさんがいました。
一次面接の評価は平均点。二次面接でも特筆すべきところはない。しかし、最終面接に同席した人事部長は、Aさんの笑顔と話し方にどこか引っかかるものを感じていました。

その時、彼が口にしたのがこの言葉です。

「なんというか…感覚的だけど、この子は化ける気がする。理屈じゃないが、当たるも八卦当たらぬも八卦ってところかな」

結果的にAさんは入社後すぐに営業部で頭角を現し、3年後には若手リーダーとして部署を牽引する存在に。
この事例は「直感での採用が当たった」レアケースともいえますが、それだけで済ますのはもったいない。

なぜなら、そこには「人間を見る目」と「結果が外れても受け入れる覚悟」が込められていたからです。
つまり、「外れてもそれが人生、だから今の感覚を信じよう」という姿勢こそ、当たるも八卦当たらぬも八卦の真髄なのです。


5-3. 【例3】営業戦略と顧客の出方

あるBtoB企業では、営業手法に行き詰まりを感じていました。これまでの訪問営業スタイルが通用せず、問い合わせも減少。
そこで提案されたのが、古典的とも思える「DM(ダイレクトメール)+電話フォロー」という手法。

現場の若手からは反発の声が上がりました。

「今さらDMですか?それって効果あるんですか?」

しかし、マーケティング部の部長は言いました。

「確かに効率は悪いかもしれない。でもな、これもまた八卦だよ。当たるも八卦当たらぬも八卦。どこにチャンスが転がってるかは、やってみなきゃわからない」

数ヶ月後、そのDMをきっかけに、大手企業の担当者から問い合わせがあり、最終的には1億円規模の大型契約へとつながりました。
誰もが予想しなかった「DMが呼び水になる」という展開は、「試してみたからこそ生まれた結果」です。

このように、「やってみないとわからない」が前提にある営業戦略こそが、実は強いのです。


6. 当たるも八卦的思考の利点と危うさ

ビジネスの中で「当たるも八卦当たらぬも八卦」という言葉をどう使いこなすかには、大きく二つの視点があります。ひとつはその「利点」、もうひとつは「落とし穴」です。


6-1. 「偶然を許容する」柔軟なマインドセット

最大の利点は、「不確実性を前提に思考できる」という点です。

私たちはしばしば、「正解を出さなければならない」「必ず成果を出さなければならない」と思い込みます。しかし実際には、完璧な予測など不可能。どんなデータ分析も、どんな優れた計画も、「世の中がどう動くか」までは制御できません。

だからこそ、「当たるも八卦当たらぬも八卦」と心の中でつぶやくことで、「やってみる勇気」が湧きます。

また、このマインドセットを持つことで、

  • 新しいアイデアをすぐに試せる

  • 失敗を過剰に恐れずに済む

  • 人の多様な意見に耳を傾けられる

というように、行動力とチームワークの両方に好影響が生まれます。

現代のビジネスでは「柔らかく、でも大胆に動ける人材」が求められていますが、その精神的支柱になるのがこのことわざなのです。


6-2. 判断を占い任せにする危険性

一方で、「当たるも八卦だから」と言ってすべてを運任せにする姿勢は非常に危険です。

たとえば、

  • 戦略なき意思決定

  • 思いつきでの投資判断

  • データや現場の声を無視した「直感だけの選択」

こうした行動を「当たるも八卦だから」で正当化してしまうと、組織やプロジェクトは崩壊の危機に陥ります。

本来このことわざは、「未来が不確実であることを理解した上で、行動することの価値」を語っているのであって、「思考停止の免罪符」ではありません。

特にリーダーや管理職にとっては、「理屈と感覚」「データと運」「判断と責任」をバランスよく保つことが、最も重要です。


7. ビジネスにおける「直感」と「理論」のバランス

ビジネスの現場では、「論理的に説明できる根拠」が重要視される場面が多々あります。会議資料には数値の裏付けが求められ、上司や顧客へのプレゼンではロジックの一貫性が問われる。それは当然のことです。

しかし、その一方で、現場を動かしている多くの決断は、「最後のひと押し」に直感が働いていることもまた事実です。

たとえば、

  • 複数の施策案から、なんとなく「こっちが伸びる気がする」と選んだ方が実際に当たった

  • 面接で「スペックは高いけど、この人は違う」と感じた直感が、後から正しかったと判明した

  • 既存の常識からは外れていても、「どうしても気になるからやってみた」企画がバズった

こうした直感的判断は、理屈で説明しにくいがゆえに軽視されがちですが、多くの場合、経験や感性、蓄積された知識が無意識のうちに総合されて導かれている“非言語的な知”とも言えます。

ここで「当たるも八卦当たらぬも八卦」が持つ意味は、「未来はどのみち読めないのだから、理詰めだけでなく、感覚も大切にしよう」というメッセージです。

特に以下のような状況では、直感と理論の“ハイブリッド判断”が威力を発揮します。

状況 直感と理論の活用例
新規事業開発 データで方向性を絞り、最後は直感で“切り札案”を選ぶ
採用面接 経歴・実績はロジックで分析、人柄や熱意は直感で感じ取る
クリエイティブ判断 数字で効果測定、でも「おもしろさ」は感覚を信じる

もちろん「直感に頼れ」とは言いません。しかし、「理論だけで完璧な正解を導ける」という幻想から抜け出すことこそが、真にバランスの取れた意思決定の第一歩なのです。


8. おわりに:不確実性をどう扱うか

現代のビジネス社会は、かつてないスピードと複雑性を伴っています。AI、グローバル化、パンデミック、戦争、SNS——ひとつの出来事が、企業や個人の運命を一夜にして変えてしまう時代です。

このような時代において、「すべてのことは予測可能である」と信じること自体が、むしろ危うい幻想かもしれません。

そんな現実の中で、「当たるも八卦当たらぬも八卦」ということわざが放つ光は、極めて現代的です。

なぜなら、このことわざは「結果に振り回されるな」「当たらないことも織り込み済みで、まずはやってみよ」という“行動を後押しする思想”だからです。

多くの人が「失敗したらどうしよう」「間違っていたら怖い」と思って、動けなくなってしまう時、
このことわざはやさしく背中を押してくれます。

「結果がどうなるかはわからない。でも、やってみなければ何も起こらない。
当たるも八卦、当たらぬも八卦。だからこそ、行動あるのみだよ。」

もちろん、むやみな挑戦は危険です。しかし、「理屈で固め、覚悟をもって飛び込む勇気」があるなら、そこには多くのチャンスが眠っています。

予測不能な時代において必要なのは、“正解を探し続ける”ことではなく、“不正解を恐れずに進む力”です。

そしてこのことわざは、そんな時代の私たちに必要な「前向きな諦め」「勇気ある覚悟」を教えてくれる、非常に奥深い知恵の塊なのです。

話す書く考える工房

コーチングとNLPを中心に少しでも皆さまに役立つ情報をお伝えしていこうと思います。がんばって更新していきいますのでよろしくお願いいたします!

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