ミルトンモデルとは暗示的に無意識に働きかける手法

ミルトンモデルとは?

ミルトンモデルは相手の無意識に対して暗示的に働きかける手法となります。

メタモデルは、省略・歪曲・一般化を防ぐモデルでしたが、逆に意図的に省略・歪曲・一般化を使うのがミルトンモデルです。

ミルトンモデルは言葉をあいまいに使うことで、言葉の解釈を相手にゆだねるモデルです。
例えば相手に何かの行動をしてもらいたい場合に、直接的な命令表現などは使わず相手の無意識にアクセスするような言葉を使い、相手の行動を促します。

ミルトン・エリクソンの言葉づかいを体系化

ミルトンモデルは、アメリカの精神科医・心理療法家であった、
ミルトン・エリクソンの言葉づかいを分析し体系化したものです。

ミルトン・エリクソンは、アメリカ臨床催眠学会の創始者で、
催眠によってクライアントが自分から行動できるようにする
治療を行っていました。

ミルトンモデルの基本

  • 直接的な表現は使わないで相手の無意識に働きかける。
  • 言葉をあいまいに使う。
  • 言葉の解釈は相手にゆだねる。
  • 相手が上手くいくように導く。

ミルトンモデルの4つのパターン

  1. メタモデルの逆
  2. 前提
  3. 曖昧性
  4. メタファー

ミルトンモデル1:メタモデルの逆(言葉の削除)

ここからはミルトンモデルのパターンを具体的に紹介していきます。

1つ目は「言葉の削除」です。

単純削除

その文の中で、中心となる主語や名詞などの言葉を単純に削除するという方法です。

本来そこに存在した言葉を削除することで、相手がその人の経験に合わせて
言葉の空白を埋めようとするため、相手のイメージを膨らませたり、
経験を呼び起こすことができます

単純削除の例

  • あなたがしようとしたことは素晴らしいことですね。
  • NLPを使って活躍されていたんですね。
  • 仕事ができる人は、こういった行動を積極的にしますよね。

比較削除

比較対象としている何かを削除するという方法です。

何と比べているのか、どこがどれくらいなのかをあえて削除することで
相手にさらに良いもの(またはさらに悪いもの)を探させます。

比較削除の例

  • 今までよりずっとやりがいのある仕事になります。
  • 世界経済が悪くなってます。
  • 最高級のお席を用意しておきます。

指示語の欠如

会話や文章に登場する名詞について、具体的な内容を特定しない表現技法で
網羅された曖昧な指示詞を使う方法です。

この方法も曖昧な表現にすることで、省略されている内容を
イメージすることを相手にゆだねることができます。

指示語の欠如の例

  • こんな状況だからワークバランスは不可欠です。
  • 世界中の一流選手が注目しています。
  • 使われる状況が段々増えてきています。

不特定動詞

曖昧な動詞を中心に使い、具体的に何が起こったかという事実は伝えない方法です。

具体的な内容を隠すことで相手が物事を勝手に解釈し、イメージしてもらうことが重要です。

不特定動詞の欠如の例

  • 今回の経験であなたは劇的な変化を経験するでしょう。
  • ひたむきな努力をしてあなたは変わったのですね。
  • あなたは今まで気づいていなかった自分を知るでしょう。

名詞化

実際はプロセスであることを、それがあたかも”もの”である
かのように表現する方法です。

動詞を名詞化することで、動きと詳細イメージを消して、
相手の無意識に働きかけます。

名詞化の例

  • 入社してからの努力と創意工夫の積み重ねて、今があるのですね。
  • このセミナーでの体験がこれからの成長と成熟した安定をもたらします。
  • この挑戦をすることで、次のステージが用意されるきっかけになります。

ミルトンモデル1:メタモデルの逆(情報の一般化)

全称限定詞

一般化する表現「いつも」「すべて」「あらゆる」など使って、
相手に当たり前のことだと思わせることができます。

全称限定詞の例

  • いつも上手に資料を作ってくれますね。
  • すべてのことがあなたの役に立ちます。
  • あらゆることが将来の夢の実現につながります。

必然性・可能性の叙法助動詞

「~べき」や「~しなければならない」などの言葉を使って必然性を示したり、
「~できる」と断定したりして可能性を示します。

必然性・可能性の叙法助動詞の例

  • こんなときはみんなで挑戦するべきです。
  • 未来への可能性を残さなければなりません。
  • あなたはこのプロジェクトを達成できます。

ミルトンモデル1:メタモデルの逆(情報を歪曲する)

因果関係

原因や理由を先に述べて、相手がある行動をとりやすくします。
人間の脳の「何かしら理由づけをされると納得してしまうという性質を利用します。

因果関係の例

  • きっとお役に立つので資料を見てくれませんか。
  • ゆっくりと寝ることができれば治りますよ。
  • コピーを取りたいので、コピーを取らせてください。

複合等価

なんらかのできごとに対して、意味づけを行ったり、二つのでき事がイコールであるように伝えます。

複合等価の例

  • この課題が解決できたら、プロジェクトは終わったようなものだよ。
  • 積極的に提案することは、社会貢献にもなります。
  • あなたががんばることで、私も勇気がわいてきます。

判断

誰が判断したかを削除したり、省略して事実のように伝えます。

判断の例

  • 読書をすることはストレス解消になります。
  • オリンピックを目指すことは素晴らしいことです。
  • コーチングとNLPは人生をより良くしてくれます。

マインドリーディング

読心術とも呼ばれる方法で、相手の心をあたかもわかっているように伝えます。
「私はあなたのことをわかっているよ」というパターンと
「あたなは私のことをわかってくれてるよね」というパターンがあります。

マインドリーディングの例

  • あなたがどれだけの強い思いで練習してきてきたかはわかっています。
  • 今回のできごとでどれだけ悔しかったは私はわかってます。
  • 私がこのプロジェクトをどれだけ成功させたいかわかってくれてるよね。

ミルトンモデル2:前提

接続詞

AとBについて「そして」や「それから」などの接続詞を使って表現し、関連性があるように受け取らせる方法です。

接続詞の例

  • 今日は久しぶりによく晴れましたね。それから、仕事も終わらせましょう。
  • 昨日はサッカーで買ったそうだね。そして、今日はプレゼンで勝とう。
  • 今日の発表上手くできたそうだね。それでは、明日のプレゼンも頼んだぞ。

時間の継続

状態を継続させる言葉「~しながら」「~している間に」「~の前に」「~の後に」
などを使って、前提を組み込むことで相手にメッセージを伝える方法です。

時間の継続の例

  • 単純作業をこなしながら、難しいことに挑戦してみよう。
  • 契約を結ぶ前に何か確認しておくことはありませんか?
  • 目的地に向かっている間にいい考えが浮かぶよ。

順序を表す言葉

2回目、3回目があることが前提を作るために、「最初の」「最後に」「次に」「もうひとつの」などの表現を使います。

順序を表す言葉の例

  • お出かけするとしたら、最初にどこの店に行きましょう。
  • 最初は上手くいきません、でも最後には爽快な気持ちになります。
  • 次に会うときのために、今試しておきましょう。

選択させる言葉

「または」「それとも」「あるいは」など選択肢を使って前提を組み込みます。

選択させる言葉の例

  • 現金またはカードのどちらで払いますか?
  • 今度のデートはどこに行く。食事?それとも映画?
  • 次回の打ち合わせは、一週間後あるいは一カ月後どちらにしますか?

意識の叙述語

「~を知っている」「~に気付いている」「~を理解している」などの言葉を使って前提を作り出します。

意識の叙述語の例

  • コーチングが人生を変えることを知っていますか?
  • あなたは自分が海外遠征に挑戦したいことに気付いています。
  • あなたは人と話すことがとても大切なことを理解しています。

副詞と形容詞

「深く」「ゆっくり」「早く」などの副詞や形容詞をつけて、それをやる前提やそのことが実現する前提にします。

副詞と形容詞の例

  • スポーツをすれば、深く人生を楽しむことができるでしょう。
  • あなたはゆっくりと休日をすごくことができましたか?
  • どれだけ早く上達できるかが問われるよね。

時の変化の動詞と副詞

時の変化を表す「~し始める」「まだ」「続ける」などを使って、そのことをしている前提を作ります。

副詞と形容詞の例

  • NLPのことがわかり始めると人生が楽しくなってきますよね。
  • まだコーチングには興味がありますか?
  • 毎日書くことを続けているとコツがわかってきますよね。

注釈の形容詞と副詞

「面白いことに」「運よく」「幸運にも」などの注釈をつけて前提を埋め込みます。

注釈の形容詞と副詞の例

  • 面白いことにこのプロジェクトは成功します。
  • 運よくその大会で優勝できるでしょう。
  • 幸運にも出会えることができました。

ミルトンモデル3:曖昧性(間接誘導)

アナログ・マーキング

言葉だけでなく、声の大きさ・トーン・ジェスチャーなどの非言語要素を使って特定の印象づけをします。
アナログ・マーキングで使う非言語はパラバーバルとノンバーバルの2つに分かれます。

パラバーバル

  • 声のトーン
  • 抑揚
  • 話すスピード
  • イントネーション

ノンバーバル

  • 顔の表情
  • 態度
  • 身振り
  • 手振り

埋め込まれた命令

直接命令するのではなく、さりげなく会話の中に相手にして欲しいことを埋め込みます。

埋め込まれた命令の例

  • 誰かTVの音量を大きくしてくれると助かるな~。
  • このプレゼン資料一緒に作ってくれると嬉しいんだけど。
  • 積極的に行動するのはいいことだと思いませんか。

埋め込まれた質問

相手にしたい質問を間接的な表現を使って会話の中に埋め込みます。

埋め込まれた質問の例

  • 御社がこれからしようとしていることとても興味があります。
  • 朝来たらコピー機壊れてたんだよね。
  • いつ旅行にいくと教えてくれると助かるな~。

否定命令

否定形を理解できない脳の特性を活用します。「~しないで」という禁止する表現を使って相手の行動をうながします。

否定命令の例

  • 洗濯物かたづけるの手伝わなくていいからね。
  • 全然心配ないので私のことは気にしないでください。
  • とてもきれいな草原のイメージをしないでください。

会話的に要求

普通の会話の中に要求を埋め込みます。YES、NOで答えられる質問を使ったりします。

会話的要求の例

  • 今日は外が暑いから部屋の中も暑いですね。
  • 今この資料作ってもらう時間ありますか。
  • Excelのこの操作どうやるか知ってますか。

ミルトンモデル4:メタファー(隠喩)

メタファー(現実性の違反)

現実にはありえないような比喩を使ったり、例え話を使う方法です。

メタファー(現実性の違反)の例

  • あなたは私の女神のようです。
  • あなた私の女神だ。
  • まるで受験生になったようにがんばってみたら。

引用

権威がある人や有名人の話を引用したり、誰か第三者の話として相手に伝える方法です。

引用の例

  • 「人生にショートカットなどない」とマイケル・ジョーダンが言ってました。
  • うちの母親がいつも言ってました。「早起きって得だよね」って。
  • 部長がAさんはいつもがんばってるっていってましたよ。
話す書く考える工房

コーチングとNLPを中心に少しでも皆さまに役立つ情報をお伝えしていこうと思います。がんばって更新していきいますのでよろしくお願いいたします!

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